2018年10月16日
人物の写真を撮る時にカメラマンが考えていること
カメラマンはファインダーの中に映る光景が少しでもよいものになるように、カメラの位置を変えたり、被写体にポーズや表情のリクエストします
力を抜いてくださいとか、あごを下げてくださいとか、笑って、とかカメラマンに言われた記憶のある方も多いかと思いますが、より良い写真にするために、考えているというよりも瞬時に感じているという方が近いかもしれません。
しかし、以前にこのブログで言っていたように、カメラマンとモデルの間に具体的な世界観が共有できていないと、カメラを見て笑ってほしくても真面目な顔をして欲しくても、カメラマンの期待通りの表情ををモデルから引き出すことはできないので、求める写真の世界観をお互いが相互理解する必要があると思います。
写真のための世界観を相互理解するには、写真を必要としている人の必要としている世界観を理解すること、理解した世界観に第三者としてのカメラマンの冷静な判断を加えて具体的に分かり易く伝えること、そして写真から伝わる世界観と必要とされている写真の世界観との間の”ズレ”を判断して、”ズレ”による違和感をわかりやすい言葉に置き換えて周りに伝えることなのかなと、今の電解では理解をしています。
早い話が、結局は写真を撮る側と撮られる側がお互いの気持ちを伝え合って、お互いの気持ちの融合したものをを写真と言う具体的な映像に残して伝えることが大切なわけで、それがスムーズにいかずにお互いがわかりあえないままでは良い写真を残すはできないのですから、カメラマンの持つべき第一のスキルは、写真を依頼してくれる人の気持ちを理解することと、自分の気持ちを依頼者に伝えることと言えるかもしれません。
簡単にいうと人と人とのコミュニケーション能力と言葉と映像をリンクする能力ですね。
僕は記念写真や証明写真や、オーディションの写真などを取りに来られた人と 撮影するまでの間少し雑談をします、少しじゃないくらいの時間をかけて話をすることもあります。それは相手の方がどんなふうに思って写真を撮りに来れたのかを知りたいからです、そしてその写真はその人にとってどういう意味があるのかを知りたいからです、そしてそれはボクが撮った写真を納得していただくために必要な作業なのです。
なんとなくシャッターが切られてスマホの中に保存されたママ忘れ去られてしまうような写真ではなく、それが家族の記念写真だったとしてもありふれた証明写真だったとしても、その写真を見るたびに、その時の情景や感情を思い出させるような、そういう力の宿った写真を一枚でも多く残せるようにと願っています。
上の写真は、今年引退を表明した杉内俊哉というプロ野球選手の、ソフトバンクホークス時代の写真です。
練習中の短い撮影時間だったのですが、あらかじめクライアント様からお聞きしていた広告写真の意図を自分なりに理解して、
「今、目の前で高校球児が一生懸命練習している姿を想像して、泥だらけのその子たちへの頑張れという応援の気持ちの視線をカメラに向けてください」と伝えました。
本来写真撮影には慣れていないプロ野球の選手ですが、僕のつたない説明の意図を理解して、すごくいい表情をしていただけた、僕の長い間カメラマン人生の中でも記憶に残る写真の一枚です。